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活動報告
2007年 |
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発表要旨
捉えられたユダヤ人とパレスチナ人 〜隙間が生んだ政治空間とその構造〜
いまなお解決の糸口が見えないパレスチナ問題。いまや憎しみが憎しみを生み、テロと報復の応酬になっている。しかし、イスラム社会においてユダヤ人とアラブ人は共生していたのである。イスラム社会においてユダヤ人・アラブ人の区別ができるのはほんの半世紀前のことである。ところが中世ヨーロッパ社会ではイスラム社会とは対照的に過激なユダヤ人差別があり、近代国民国家の誕生以降も反ユダヤ人主義・ナチスによる強制収容所の悲劇があった。ユダヤ人はシオニズムによって自分たちの国家を望むようになり、1948年のイスラエル建国という形でその望みを叶える。しかし、それはまた、パレスチナという新たな空間を生み、現在まで続く問題を提示させることになった。その原因は近代国家の誕生によって生まれた例外状態と考え、『隙間=例外状態は何をもたらしたのか』ということを、アガンベンの理論を使いながら、18世紀末からの反ユダヤ人主義と現代のパレスチナ問題に隠れた政治空間を明らかにすることが本発表の目的である。 |
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2008年3月21日 |
発表者は、シンガポール共和国の基本原理である多人種主義(multiracialism)の起源について研究を行っている。その関心のひとつは、国民国家という秩序構築の過程において、エスニシティの形成が紛争の要因となり、その回避において他のエスニック集団との他者性や差異、そうしたものの多様性を尊重する多人種主義が成立した政治的ダイナミズムである。本報告は、植民地期から1965年分離独立に至るまでの歴史的背景について言及するに留まる。(Nirmala 2000)[1]らのエスニシティ研究においても言及されているが、シンガポールにおけるエスニシティは戦略的に利用されている。ここでは、こうした戦略的利用は、原初主義的アプローチ(Primordialist Approach)、動員/道具主義的アプローチ(Instrumentalist Approach)の両面から捉えられるのではないかと指摘した。本報告では、エスニシティの戦略的な利用といわゆるエスニシティの境界設定の議論を紹介している。また、シンガポールの国民(nation)形成の過程においてもうひとつの境界である、国籍(nationality)や市民権(citizenship)について、(金子2001)[2](田中2001)[3]らの先行研究を元にその視角について紹介した。それらを踏まえ、法制度上の境界や境界線上にいるひとびとの立場と、憲法制度上の議論と交渉との関連を大まかに説明すると共に、その境界を定める範囲や異化がエスニシティと密接に関わることを示唆した。さらに本研究会の今期テーマである、「多元主義とその隙間」に併せて、従属植民地の現地出生者の法制度上の位置づけを境界線上として捉え、帝国における多元主義的アプローチとその法制度上の歪みについて、後半言及した。 -------------------------------------------------------------------------------- [1] Nirmala Srirekam PuruShotam (2000)Negotiating Multiculturalism Disciplining Difference in Singapore, Berlin: Mouton de Gruyter [2] 金子芳樹(2001)『マレーシアの政治とエスニシティ―華人政治と国民統合―』、晃洋書房 [3]
田中恭子(2001)『国家と移民』、名古屋大学出版会 |
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2008年5月9日 |
グルジアの民族問題 |
発表者: 小川えりか |
今回はグルジアの歴史的経緯・経済的側面を軸にロシア帝政末期からのザカフカース史を通じて、ザカフカースにおける民族問題について考えた。 ザカフカースでは、数多くの民族、人種、宗教、言語、歴史、文化、習慣を異にする人々が点在しており、しかも山岳地域であるため、各民族が極めて独自の文化を保ったまま分かれ棲んで来た。これらの複雑な文化基盤にさらに政治、経済、社会など多方面に渡る問題が複雑に絡み合っているという特徴を持つ。 ソ連解体直後は独立・紛争問題が多発し、その多くが現在も解決の見通しがたっていない状態が続いており、豊富な天然資源を有するものの、上記に述べた諸問題の複雑さもあり、まだまだ安定した政権、潤滑な経済状況とは言い難い。BTCパイプライン問題を筆頭に水面下ではロシアと欧米による当地の覇権争いも起きていることは周知の事実である。 特に当地は、欧州、中東、ロシア、アジアを結ぶ地政学上の要衝に位置しているばかりでなく、国内にも独立紛争や内部対立など民族問題も多く抱えている。グルジアにおいては、欧米路線をとる政府とそれに反対するロシアとの対立もあり、一触即発状態である。 当地における民族問題は、単なる宗教紛争・民族紛争ではない、という認識を持たなければならない。民族問題は、国内階級間、諸国家・諸民族間、国−諸大国間で根深く生じ、さらにそれは経済的利害の問題と絡み合い、問題の複雑化の要因となっている。当地では民族意識が高かったことに加え、ロシア帝国やソ連の民族政策と欧州のナショナリズムの思想によって一国家単一民族という認識が強まり、「国家」としての領土への執着、民族の連帯、他民族排除の思想へと繋がったと考えられる。 また現代における対大国と保有資源の利権争いの問題に関しても触れ、解決を妨げる内外的要因を挙げ、今後の課題等について考察をした。 |
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発表者: 中田浩之 |
カフカス地方にあるグルジアは、石油の産地である中東諸国や紛争の続くチェチェン共和国(ロシア)と接している。1991年のソ連解体後に独立したグルジアは、内戦を経た後の2003年のバラ革命により、民主化が進展した。現在のグルジアは、欧米の民主化支援等により、新欧米路線を採っている。そのため、カスピ海の資源確保のために、グルジアを戦略的要所と考えるロシアとの軋轢(グルジア産ワインのロシアへの輸入禁止措置、ロシア軍機のグルジア領内侵犯等)は顕著となっている。 また、グルジア国内にあるアブハジア自治共和国、南オセチア自治州等の地域は、グルジア政府の支配が及ばない地域となっており、ロシアがグルジアへの圧力をかけるために、上記地域を利用している。このように、グルジア政治は、欧米とロシアとの間で、揺れ動いています。 グルジアを始めとするカフカス地方は、日本からはなかなかなじみの薄い地域ですが、現実には、日本はグルジアの主要援助国です。また、2014年冬季五輪は、グルジアに近い黒海沿岸のロシアのソチで開催されます。カフカス地方は、今後目を離せない地域の一つとなるはずです。 |
多元主義国アメリカとキッシンジャー |
発表者: 松本典子 |
ユダヤ人キッシンジャーは、1923年5月27日、1860年の時点で人口1万4千人のうち半分がユダヤ人であったドイツのフュルトで誕生した。少年時代、ナチス・ドイツの迫害を受けたため、家族でアメリカに移住した。そして後に国家安全保障問題担当補佐官、国務長官となる。 彼はアメリカに移住してから、アメリカ的になろうと努めていた、と言われている。ちょっとしたアメリカ的しぐさも敏感に取り入れてきた。 一方で彼の外交政策は、典型的な現実主義外交であり、イデオロギーを排除し、勢力均衡を重視したヨーロッパ的政策であった。これは「正義」という、共通認識が困難な観念の下での人間の行動の恐ろしさを少年時代に身をもって体験したためだと考えられている。アメリカになじみ、アメリカ人として生きることを望みながらも、実際の政策はウィルソン的な政策ではなく、ビスマルクやメッテルニヒ的政策にならざるを得なかった。これらのことから、キッシンジャーはアメリカという多元主義的国家の中で、「多元主義のすきま」にいた人物なのではないだろうか。 参考文献 |
フィールド報告: アフリカ・マラウィーの水環境について |
発表者: 山田祐加 |
Fieldwork |
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